中三弘前店

 

2024年08月10日(土)に、中三弘前店のWebサイトにこんな告知が掲示されていた。

2024年8月28日(水)は決算棚卸のため午後4時にて閉店

2024年8月29日(木)は臨時休業

そして2024年8月29日に、激震が走った。百貨店「中三」運営企業の破産手続きの開始決定の発表。それに伴う中三弘前店の閉店。

中三側の発表によると、従業員85人は全員解雇。営業不振が顕在化したのち、百貨店事業の継承先を調整していたが、建物の老朽化がネックとなり難航。そのため、建物の解体を前提として事業者と交渉していく。

業績悪化の一因は新型コロナ。2023年8月期には売上が17億2300万円、営業利益が2億2200万円の赤字と、百貨店としては満身創痍の水準であった。2024年4月にはフランチャイズで営業していたジュンク堂書店が閉店し、その後もテナントの撤退が相次いでいた。

負債総額は現時点で9億円で、8億4000万円の債務超過。従業員には8月29日に松林由縁社長から説明があったという。朝礼で破産と解雇を告げられた。

1896年に五所川原市で呉服店として創業し、一時は北東北の代表的な百貨店にまでのし上がっていた「中三」の営業が突然、終わりを告げた。


中三弘前店は、弘南鉄道大鰐線の始発駅である中央弘前駅の近く、土手町の商店街の一角に店舗を構えています。多店舗経営をしていた中三にとって、弘前店は百貨店として最後の1店舗になってしまいました。それでも、弘前市の街なかにある百貨店として、地域の人々に欠かせない存在となっています。

 

中三弘前店。弘前市中心街の1つ、土手町界隈に店を構える。JR弘前駅からは日中10分間隔で運行している弘南バス下土手町バス停すぐ。

 

中三弘前店正面入り口。NAKASANのロゴが買い物客を迎え入れる。

 

中三弘前店といえばこのお椀型の構造物。毛綱毅曠建築事務所が設計したもの。

 

1階は定番の婦人雑貨、コスメのフロア。間違いなくデパートの1階フロアである。中三の百貨店部分としての売場は地階から3階までとなっている。

 

2階はファッションやインテリア、紳士服などのフロアとなっている。弘前ねぷた祭りが近いためか、祭り用具特設コーナーが設けられていた。3階は百貨店の主力、婦人服のフロアである。

 

4階と5階は、「マチナカラック」という名の百貨店内のアウトレットフロア。斬新な試みではあるが、平日日中は閑散としており、会計も4階フロアの集約されていた。休日の客入りはどうななのであろうか。アウトレットというと家族連れがオールド規格の商品や、正規店販売不可商品などをロープライスで見て回るイメージなのだが、確かにロープライスではあるがメンズ向けの扱いが余りに少なく、家族連れで見て回るという回遊が生まれないのではないかと思った。街なかの百貨店で、大きい買い物袋にたくさんのアウトレット商品を入れてフロアを回遊する姿が見てみたい...。

 

1階から下りのエスカレーターに乗り地階へ下ると、銘店と食品のコーナーに至るわけだが、エスカレーター降り口にデパートの買い物袋自動販売機が。まだまだ現役。これぞデパート。動作の様子はX(Twitter)の投稿(←リンク)をどうぞ。

 


中三弘前店のこの特徴的な建物の構造は、毛綱毅曠建築事務所が設計したもの。弘前の街なかに突然現れる曲調の構造物は、見るものに大きなインパクトを与える。

 

中三弘前店の正面入り口。中三の百貨店としての売り場自体は地下1階から地上3階までとなっている。6階はジュンク堂書店が営業している(ジュンク堂書店は2024年で閉店)。

 

百貨店にアウトレットがやってきた。中三弘前店の斬新な試み。4階と5階の売り場はアウトレットとして各ブランドが取り揃えられている。

 

百貨店部分の売り場の様子。中三弘前店は2022年に開店60周年を迎えた。

 

いつまでも地域に愛される百貨店。中三弘前店。

 

売り場から曲調部分を見ると、一地方の百貨店とは思えぬ特徴的な構造となっている。

 

ただ、普段使いでこの階段を上り、3階フロアまで足を運ぶ買い物客がいるかは??

 

4階と5階の売り場を占めるアウトレットフロアは2019年8月30日にオープンした。開店直後は閑散としていたが、普段の人の入りはどうなのであろうか。

 

この特徴的な曲調部分、いわゆるお椀は遠くからでも目にすることができる。中三弘前店。これからも街のデパートとして愛され続けてほしい。

 


2006年当時の中三弘前店。特にお椀を気にせず撮影してしまったので...

 

中三弘前店の入り口上のロゴのデザインは、現在と異なっていた。