コルニエツタヤ

 

68年ぶりに復活した大名行列が練り歩き、大勢の市民が詰めかけた福島市の中心市街地でそのわずか2日後の2002年11月5日、福島駅前のファッションビル・コルニエツタヤを経営するツタヤ百貨店が自己破産という衝撃的な出来事が起こった。コルニエツタヤに入居するテナントの多くは営業継続を希望し、一時は当面年明けまでの営業の可能性が見えていたが、ビル運営費の問題等からテナントの営業継続は極めて困難となり、断念。駅前通りの街角で親しまれてきたコルニエツタヤのテナントの営業は、残念ながら2002年11月19日をもって終了となった。

 

ツタヤと言えば通常CDレンタルのツタヤを連想するが、福島市でツタヤと言えば福島駅前長崎屋向かい、コルニエツタヤのことである。コルニエツタヤを経営するツタヤ百貨店は1882年に郡山市で創業した呉服店が前身である。1958年に福島市に中合、山田に次ぐ百貨店として店舗を構えたが、1972年に百貨店営業を取り下げ、テナントビル形式に転換した。ピーク時には40近くのテナントが入居し、直営の衣料品・制服コーナーとともに若者向けのファッションビルとして大きな集客力を誇った。学校帰りの高校生などが足を運び、店内は賑わっていた。また、入学のシーズンには新制服を買い求める親子連れが押し寄せ、特設コーナーを設けて学生服販売にあたっていた。"学生服といえばコルニエツタヤ"であった。しかし近年の不況と中心市街地の空洞化により、テナントが徐々に減っていった。空きフロアには直営の衣料品店を設けたが徐々に資金繰りが悪化し、2002年11月5日、福島地裁から破産を宣告された。

 入居しているテナントについては引き続き営業していたが、破産宣告人は当初テナントについては「8日までは営業可能で、電気などの設備も10日まで確保する」と通知していた。しかし、ほとんどのテナントは営業継続を強く要望。これらの動きを踏まえ8日に行われたテナント向け説明会で、福島地裁の判断や大口債権者の意向を踏まえつつも債権者集会が開かれる2003年1月20日まで営業できる可能性を示していた…。

 

11月9日、当面は営業が継続できる可能性が示されたことで、コルニエツタヤの入口には営業継続を告げる張り紙が張りだされていた。一部テナントは商品を撤去したが、ほとんどが引き続き営業していた。

 

9日の開店10分前にはコルニエツタヤ前に買い物客が集まりはじめていた。ミスタードーナツも通常通り営業していた。

 

開店間際には20人近くの買い物客が開店を待っていた。なお、コルニエツタヤ内にある福島銀行のATMは閉鎖された。

 

開店時刻。通常ならば係がドアを開けて「いらっしゃいませ」と買い物客を迎えるが、この日はあるテナントの店員さんが数カ所のドアの鍵を忙しそうに開けてまわっていた。店内には「おはようございます。コルニエツタヤ、開店の時間でございます。」といつもと変わらぬ放送が流れていた。

 

コルニエツタヤの危機を聞きつけてか10日の日中には多くの買い物客が店内をまわっていた。なお、平和通り地下駐車場の駐車券の案内板では、コルニエツタヤの駐車券の部分がシールで覆われてしまっていたので、どうやら使用できなくなってしまった模様だ。

 

しかし、営業継続の可能性は断たれた。

11月12日に開かれた2回目のテナント向け説明会で、引き続き営業を希望するテナント数がビル運営費を賄うのに不十分だったことに加え、新たにエレベーター補修費などの支出が緊急に必要であることが示された。長年市民に親しまれてきたコルニエツタヤ、2002年11月19日をもってテナントの営業が終了することになった。

 

以下は11月17日の画像。営業継続への努力も実らず、惜しくも閉店を告げる張り紙が張り出されていた。

 

11月19日をもって営業を終了する旨を知らせる張り紙。突然の自己破産・そして閉鎖決定、長年福島駅前の顔であった愛の街角コルニエツタヤの閉店は、惜しむ実感もないほどあっという間であった…。

 

閉鎖前最後の日曜日、肌寒い日にも関わらず店内にはコルニエツタヤでの最後の買い物をする人で溢れていた。やはり若者の買い物客が大部分を占めていたが、年輩の方の姿も少なからずあった。28年間の営業ももうすぐおしまいとなる。

 

一部のテナントは既に営業を終了していた。99円スーパーの姿は既に無く、店内にもちらほらと空きスペースが。営業を続けているテナントは閉店セールを実施し、コルニエツタヤでの最後の営業に力を入れていた。

 

コルニエツタヤのさくらんぼのシンボルもこれっきり…。残るテナントも11月19日をもって閉店。長年コルニエツタヤで営業してきたミスタードーナツは19日25時、すなわち20日午前1時まで営業。これをもってコルニエツタヤの灯は消され、街角の思い出がまたひとつ消えていく。

なお、コルニエツタヤのテナントのうち営業継続を希望する約10社について、向かい側にある旧長崎屋・ニュー福ビルに移転する方向で調整中。年末までのオープンを目指す。