イトーヨーカドー白河店

 

 

福島県南部の都市白河市、城下町として栄え県南の中心都市として発展してきた。白河駅前には商店が並び周辺の町村の他、かつては栃木県からの東野交通の路線バスに乗って白河まで買い物に来ていたお客さんもいたという。郡山市までは電車で30分という距離にありながら、白河駅前の中心市街地には十字屋白河店、イトーヨーカドー白河店の2つの大型店が営業し、街は活気に包まれていた。イトーヨーカドー白河店は昭和46年10月にオープン、イトーヨーカドーの店舗としては初期世代に入る。地上3階地下1階建ての中型店で、百貨店である十字屋白河店とともに白河市の中心市街地の商業を引っ張ってきた。

だが、近年そんな白河市の商業地図は急速に塗り替えられていった。白河市や隣接する西郷村などの郊外にジャスコ、ベイシア、メガステージなどの大型店が相次いで出店。大型の駐車場を有する郊外店の攻勢、白河駅前の客足は瞬く間に減少していった。商業の中心は郊外や、新幹線停車駅である新白河付近に移り、白河市の中心市街地の活気は消えていったのである。イトーヨーカドー白河店とともに中心市街地の核となっていた十字屋白河店は平成10年10月に力尽き撤退した。残ったイトーヨーカドー白河店は十字屋跡地などに無料駐車場を増設し、買い物客の利便を図っていたが、中規模店舗というネックも重なり郊外に向いた客足の流れを変えることはできなかった。平成9年度には29億円の売り上げだったが、平成12年度には19億円にまで減少。白河駅前最後の砦であったイトーヨーカドー白河店も平成14年5月26日をもって閉店となったのである。

 

閉店日の5月26日、「最後の売り尽くし」という垂れ幕が掲げられイトーヨーカドー白河店は最後の閉店セールを繰り広げていた。周辺には臨時の駐車場も設けられたがどこも満車、道路も車で混み合っていた。店の前には多数の自転車が。郊外店に客足が流れたあとも近所の住民はイトーヨーカドー白河店を利用し続けていたのだろう。

 

有料駐車場も満車、何台かの車が困っていた。白河駅前の繁華街にそびえるイトーヨーカドーの姿もこれが最後…。

 

夕方のにわか雨の間にも関わらず多数の買い物客が来店していた。店の外にまで響きわたる値引き商品の案内放送、周辺の人通りも多く白河駅前の通りは久しぶりに活気に包まれていた。

 

日が落ちて暗くなった後も、来店客が相次いだ。老若男女問わずイトーヨーカドー白河店で最後のお買い物。通常は20時30分閉店だが、閉店セール最後の25日・26日は営業時間を21時までに延長し、白河駅前での最後の営業に力を入れていた。

 

街路灯にくっきり浮かび上がるイトーヨーカドーのシルエットもこれっきり … 。

 

20時をまわっても客足は衰えず店内は大混雑。小さな子供連れ、家族連れなどの姿も目立った。店内には3割引、5割引などの商品が並び、さらに「お値段書き換えいたしま~す。」との店員の声が飛び交う。20時30分を過ぎるとさらに値段は暴落。3F生活用品売場ではトイレットペーパー198円やワゴンの品全て10円のコーナーに主婦らが殺到。2F衣料品売場では大幅に値引きされたYシャツを買おうと店員に首まわりなどを測ってもらう男性の姿や、カジュアル衣料の品定めをする若者の姿が目立った。店内では昔のイトーヨーカドーでの買い物話や十字屋があった頃の思い出話などを語りあう人たちもいた。

 

閉店15分前になり、店内には[蛍の光]が流れ始めた。正面入り口には店長以下従事員が並び、店を出ていく買い物客に「ありがとうございました!」と元気な声で頭を下げていた。ただ閉店間際になっても来客する人の姿もあり、また店内の混雑も続いていた。

 

ここでこのお子様が登場。マスコミの取材陣にカメラを向けられて大はしゃぎ。入口を行ったり来たりして、何度も店の中に出たり入ったり。このお子様が出るたんびに「ありがとうございました!」あまりにも出たり入ったりするので、お子様が再び店に入るときに並んでいた店員さんが「いらっしゃいませ!!」買い物客の笑いを誘っていた。閉店前の和やかなひととき。

きっと今は、好青年になっているであろう。イトーヨーカドー白河店のこと、覚えているだろうか...?

 

閉店間際。次々と買い物客が店を後にしていく。「30年間のご愛顧誠にありがとうございました。イトーヨーカドー白河店は本日をもちまして閉店させていただきます。またいつか、お会いできる日が来ることを … 。」

 

様々な思い出を残し、去っていく買い物客。それを見送る従事員。若い男性グループの1人が店員に「皆さんお元気で!」と声をかける姿も。

 

最後に店長が、イトーヨーカドー白河店の最後の姿を見届けようと店の外に残っていた市民に向かって「30年間、誠にありがとうございました。」と挨拶。長年白河駅前の顔としてあり続けたイトーヨーカドー白河店はこれをもって閉店し、その歴史に幕を閉じた。

 

イトーヨーカドーの出入り口や広告塔の明かりが消され、辺りは静まり返った。街路灯が寂しく道を照らしている__________