十字屋仙台店

 

十字屋仙台店は、東北の中心都市、宮城県仙台市に店舗を構えていました。1972年4月1日にオープンし、1974年12月に増床するなど、仙台駅前を代表する都市型百貨店となっていました。開店当初から中高年層の主婦などの客層をつかむ一方、1999年には若者向けのテナントを多数入居させるなどリニューアルを行い、ピーク時の2000年度には153億円の売上を記録しました。しかし、ここ数年は売り上げが伸びず、効果的な改装も行えないままダイエー系列の不採算店舗として、早期の黒字化は困難との判断が下されました。そして2005年11月30日、仙台の発展とともに歩んできた歴史に幕を閉じることとなりました。

 

十字屋仙台店東館は、仙台駅前歩道橋と直結している。夜も眠らない仙台市中心街に映える十字屋マークもこれが最後。

 

南町通りに面する本館入り口。閉店2時間前になっても客足が衰えない。店に向かう人たちで歩道や横断歩道の人の行き来も激しい。

 

店内は最後の買い物を楽しむ会社員、学生、主婦らで大混雑。既に空の商品棚もあったが、3割引から半額の商品が飛ぶように売れていた。本館入り口の軽食販売の列も途切れることなく続いていた。店内では、「店を訪れると○○さんのことを思い出す。」と話したり、「どうして店を残してくれないのだろうか?」と閉鎖が決定され、職を失う店員に同情の言葉をかける買い物客の姿もあった。

 

東館1階出口のサービスカウンター前には、店員が整列し買い物客を見送っていた。閉店10分前になると、店内に「蛍の光」が流れ始めた。「閉店10分前でございます。お買い漏れはございませんでしょうか?」のお知らせに続き、「2ヶ月にわたる閉店セールは、ご満足いただけましたでしょうか?忙しさのあまり、失礼はございませんでしたでしょうか? … 」と館内放送が流れ、閉店を告げていた。閉店時刻をまわり、多くの買い物客が次々と店を後にした。

 

店の外には、十字屋仙台店の最後を見届けようと残った市民が多くいた。最後の買い物客を見送った後、店員が出口に整列し、十字屋仙台店の店長の挨拶。「長年にわたるご愛顧ありがとうございました。 … 十字屋仙台店は本日で営業を終了いたしますが、皆様方におかれましては、仙台の発展とともに、ご健勝いただければと思います。」

 

店長挨拶が終わり、集まった市民から大きな拍手が送られる中、十字屋仙台店のシャッターが下ろされ始めた。従業員が感謝の気持ちを込めて頭を下げる中、十字屋仙台店の入り口が閉ざされ、33年間にわたる営業が終了した。

 

シャッターが閉ざされた後も、入り口付近にとどまり名残を惜しむ多くの市民の姿があった。